心も体も元気になるデリとオヤツ~学園坂タウンキッチン不定期水曜日「やさしいオヤツ+ごはんmiel*」
毎日のごはんの支度が心の負担になること、ありますよね。
「最近のお母さんは、家事も子育ても仕事もと忙しく、そして完璧を目指す人が多い。それがストレスになるくらいなら、抜けるところは抜いたほうがいい。デリ1品でも夕食の献立に取り入れてもらえれば、心に余裕ができると思うんです」
そう話すのは「やさしいオヤツ+ごはんmiel*(ミエル)」店主・庄司淑子さん。
疲れているとき、体調が悪いとき……罪悪感なく、ラクさせてもらえるデリとオヤツが、ここにあります。
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裏メニューだったワンプレートが、いつしか看板メニューに
「miel*」営業日のランチタイム、「学園坂タウンキッチン」のイートインスペースでみんなが食べているのは、500円のワンコインプレート。
「ちょっとずつでも全種類を食べたい!」という女性の願望を満たしてくれる一皿です。
これに、旬の野菜がたっぷりのスープを組み合わせるのがランチの鉄板。
↑この日は、人気のタンドリーチキン(100g360円)、ヤムウンセン(タイ風春雨サラダ 100g360円)、梅とじゃこの炊き込みごはん(150g300円)の3品。ゴロゴロ野菜とレンズ豆の美肌スープ(380円)をつけて、880円で立派な定食に!
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「テイクアウトをメインで始めたお店なので、本当は『食べていきたい方はどうぞ』という裏メニューだったんですが。気づいたらイートインだらけになっていました」
仕込みから販売・接客までひとりでこなす庄司さんは、うれしい悲鳴を上げます。
「おいしかったから夕食用にも」と、気に入ったおかずをテイクアウトするお客様も少なくないとか。
↑テイクアウトは量り売りのほか、3品盛り合わせのお弁当スタイルでも販売。こちらもワンコイン500円。スープもテイクアウトOK。温めなおしのポイントや、おいしい食べ方アレンジを載せたメモも好評。コロナ禍で緊急事態宣言発令中にチャレンジした、完全予約発送のデリ便も話題に。
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旬の野菜をたっぷり使い、化学調味料不使用の「miel*」のデリは、みそや甘酒、粒マスタード、スイートチリソース、コチュジャンなどの調味料も自家製にこだわります。市販の味の濃いおかずを食べたときのように、食後に喉が渇いたり、胃もたれしたりすることはありません。
マフィンやクッキーなどのオヤツは、牛乳・卵・白砂糖不使用。
「おいしくて、安心できる素材のお惣菜やオヤツが買えるお店って少ない。そんなお店を、なにより私が欲しかったんです」という庄司さん。
2019年夏、一念発起してこのお店を始めました。
↑「miel*」のオヤツは、クッキーもアイスも乳・卵不使用でやさしい甘さ。バナナココナッツアイス(300円)はデザートやティータイムのおともに大人気。
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キッチン仕事は長時間労働。営業のない日も週に2~3度、仕込みに入ります。調味料やクッキー生地の仕込みもあるので、前日の作業だけでは終わりません。
それでも「miel*」の営業以外にアイシングクッキーの受注販売や講師、さらに食の世界とはまったく違う研究所の勤務も掛け持ち。地元のFM番組にレギュラー出演したり、カメラの趣味が高じて撮影を依頼されることもあるとか。
「本業が何なのかわからないって言われる」と笑いますが、「仕事によって脳も体も使うところが違うので、バランスが取れているのかな。どれか一つだけ選ぶことは、私にはできません」と話す庄司さん。
その華奢な身体のどこから?と思えるほど、パワーがあふれています。
↑看板メニューのタンドリーチキン。多い日は鶏肉4㎏を仕込み、随時焼き上げます。この日はこの大きなバット3枚分を売り切りました。
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マクロビ+天然色素のやさしいアイシングクッキー
「学ぶことはすごく楽しい!」と目を輝かせる庄司さんは、ナチュラルコーディネーター、野菜コーディネーターなどの資格も持っています。
子育てをしながら、働きながら、通信教育や独学も含め時間をかけて、食の知識を深めてきました。
子育て中心の生活をしていた頃、「さっとお菓子を作れるお母さんになりたくて」、独学でお菓子作りをスタート。パティシエだった亡き妹さんの道具を引き継ぎたいという思いもありました。
まだ1才だった息子さんを連れて、子育てサークルや公民館でのパン教室に通うと、食物アレルギーの子が多いこと、乳製品や卵を使ったお菓子や食事を食べられない人が多いことを知ります。食と健康について学ぶうち、マクロビオティックに出会い、興味を持つようになりました。
「マクロビはストイックで難しそうというイメージがあるかもしれませんが、季節や風土にあった素材をバランスよくとることを大切にしているんです。私はジャンクフードやお酒も好きですが、“選べる強み”を身につけました」
やさしい甘さで、体に負担の少ないマクロビスイーツ作りにハマり、家族だけでなく友人に食べてもらうと「教えてほしい」「売ってほしい」と言われるように。
子どもが小学校に入ったタイミングで、本格的にマクロビを学ぶスクールに通い始めました。
「その頃には年に数回、お菓子をイベントに出品する機会がありました。きちんと学んだことで、自信をもって自分のやっていることを説明できるようになったんです」
↑中学生の男の子の母親としての時間も大切にしている庄司さん。誕生日は毎年、息子さんが好きなものをデザインしたアイシングクッキーとケーキでお祝い。
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さらにアイシングクッキーの講師資格を取り、「マクロビクッキー+天然色素中心のアイシング」という独自のスタイルを確立。「学園坂タウンキッチン」を工房として利用し、オーダー販売やアイシングのレッスンを始めました。
「子どものころから絵ばかり描いていた私と、お菓子を作る私がつながったんです。アイシングは手間がかかりますが、難しいオーダーをいただくと燃えてしまう(笑)。誰かの大切な思い出の中に、私のアイシングが残ると思うと、幸せな仕事です」
↑アイシングクッキーの作品サンプルは、「miel*」店頭でも見ることもできます。
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誰と食べるか、どう食べるかも大切。「胸を張って手を抜いてもいいよ」と伝えたい
工房としての利用期間を含めると、学園坂タウンキッチン歴は約6年と古株の庄司さんは“学園坂のお母さん”のような存在です。
「誰かに頼らず、自分の拠点がほしい」と店舗営業にふみきって1年。
「50代を目前にしての出店は、体力的にはきつく、かなりのチャレンジだった」といいますが、10年前には思いもしなかった展開に、家族も友達も、誰よりも庄司さん自身がいちばんびっくりしているそう。「人生はなにが起きるかわからないからおもしろい!」と楽しそうに笑います。
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最近は「インスタを見て来ました」と遠方から足を運んでくれるお客様も増えました。
でも根底にあるのは「地域のサードプレイスのような場所になれたら」という思い。
「老若男女が声を掛け合う学園坂商店街のあたたかさが大好き。ホッとできる居場所のひとつでありたいと思っています。ここで知り合ってお友達になった方たちが、次回はいっしょにランチに来てくださったりすると、やっててよかったなと感じます」
↑季節のフルーツで作る自家製コンポートやシロップを使ったソーダ。仕事や買い物帰りに一杯飲むと、シャキッと元気をもらえます。写真はプラムソーダ(400円)。
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「外食が続いたときに私のごはんを食べると体がホッとする、と常連さんに言われたことがあって。私のごはんは外食のカテゴリーじゃないんだ!とうれしくなりました」と話す庄司さん。
「ごはんやオヤツには、作る人の想いが入ります。イライラしながら作ったものはおいしくない。だからこそ、無理をして作るより、胸を張って手を抜いて、殺伐としないごはんの時間を家族で過ごしてほしいんです。“何を食べるか”は大事ですが、“誰と食べるか”、“どう食べるか”はもっと大事だから」
「食べた人に、心も体も元気になってほしい」と心を込めて、今週もこの場所で、デリとオヤツを作り続けます。