南インド料理シェフのママによる出張料理も!
『&Spice(アンドスパイス)』
2年前まで一橋学園の「学園坂タウンキッチン」で営業していた『アンドスパイス』。南インド料理がベースのカレーが大人気でした。⇒⇒当時の取材記事はこちら!
休業期間中に店主・田口美緒さんは女の子を出産。現在は2歳児の子育てに奮闘しながら、月に1回カレー屋を出店するほか、出張シェフサービス、料理教室を行っています。
◆◆◆
カレー屋は国分寺に移転し、第2金曜日に営業中
現在営業しているのは、国分寺駅南口徒歩5分ほどの「カフェといろいろ びより」。日替わり店主がランチやスイーツなどを提供するシェアカフェで、子連れでも気軽に利用できます。
ここで毎月第2金曜日、南インドカレーやおかずを盛り合わせたプレートランチ(1210円)を提供。「場所柄、以前より単価設定が高めですが、だからこそ挑戦できるメニューもある」と田口さん。取材した日、ご飯はバスマティライス(インドのお米)にまいたけ、ひらたけ、しめじがたっぷり入った炊き込みご飯でした。炊き込みご飯でカレーをいただくなんて、初めて。なかなかの贅沢です。
↑この日のメニューは、かぼす香る秋鮭とさつま芋のココナッツカレー、旬のおやさいのサンバル(豆のカレー)、きのこのプラオ(スパイス炊き込みごはん)、かぼちゃのポリヤル、はぐらうりのウールガイ(おつけもの)、りんごのライタ(ヨーグルトサラダ)。+165円で半熟卵のアチャールも追加しました
ただ辛いだけのスパイス料理とは違い、素材の味がちゃんと生きているやさしい味が「アンドスパイス」の持ち味。一品一品食べてもおいしいのですが「混ぜて食べてくださいね」と言われたことを思い出し、スプーンで少しずつ混ぜて口に運びました。混ぜてよかった! 相乗効果でさらにおいしさが増して、単品とは違う味の変化を立体的に楽しめました。
◆◆◆
子育てと両立しながら、大好きな料理ができる道を模索
お子さんが保育園に通い始める前は、子育てを100%楽しんでいたという田口さん。気持ちが仕事モードに切り替わったのは、保育園が決まってからでした。
「幼稚園に入るまで家でみようとも考えていたのですが、私が働いたほうが家計は助かるのはもちろん、保育園に通えば子どもの社会性が育つのでは?という夫の意見もあって、年度途中での入園を決め、8カ月から預けられることになりました。仕事を再開したことで、自分でもバランスが取れ、よかったなと思っています」
とはいえ、以前のように毎週お店を出す働き方は厳しいと判断。一人で30食分を用意するために、前々日に買い出しをし、前日に仕込み、当日仕上げて営業する……という流れは、体力的にハードなだけでなく、「いつ子どもが熱を出すかわからない」という緊張感が精神的な負担となって重くのしかかるといいます。
「仕事としては楽しいのですが、これを毎週やるのはきつい(笑)。子どももまだ定期的に月1回ぐらいの頻度で熱を出すので、出店できなかったときのリスクが大きいんです。このあいだも仕入れていた大量のえびが余ってしまって、冷凍してわが家で消費しました」
今は月1回ペースの営業がベスト……そのほかの時間に何をしようかと考え、たどり着いたのが出張料理でした。
「出産後、3カ月ぐらいのときに、出張シェフをやっている知人に自宅に来てもらったのがすごくよくて、素敵な仕事だなと思ったことを思い出したんです。ちょうど彼女が入れ替わりで産休に入ったので、今度は私がサポートに行きがてら、出張料理の練習をさせてもらいました」
◆◆◆
3~4時間で10品、即興で作る! 出張シェフサービス
現在提供しているサービスは、3.5~4時間で10品のAコース(9,900円+出張費)、4~4.5時間で12品のBコース(11,000円+出張費)。食材は利用者が用意し、前日までに田口さんに知らせておくスタイル。カレー、南インド料理はもちろん家庭料理まで、利用者の「これが食べたい!」というリクエストにも答えてくれます(おまかせでもOK!)。
筆者も、少し前に(夫が出張続きでワンオペだったタイミングで)利用してみました。
私が用意した食材はこちら。自分で作るとなるとなかなか手を出せなかったかたまり肉も、この機会に購入。ずっと使いきれずにいた乾物の大豆を使った料理と、いつもお店で注文する「半熟卵のアチャール」をリクエストしました。
基本的な調味料は各家庭で使っているものを使用。ほかに、お店でも使っているスパイスを10種類以上、持参してくれます。
これさえあれば、「カレーなら何でも作れる」のが田口さんの強み。
「玉ねぎ炒めや煮込みに時間がかかるので、2~3種類でお願いしています。カレーを仕込みながら、今ある材料でほかに何が作れるか考えて調理しています」
この日も、かたまり肉や豆の下ゆでをしながら、チキンカレーの仕込みから始まりました。
使ったことのないキッチンに調理道具、初めて見る食材……という環境。「はじめのころは10品作るのに5時間かかった」といいますが、鮮やかな手さばき。田口さんにキッチンをおまかせして、最初と最後以外は外出してもいいそうですが、プロが料理する手元を見られるのも楽しく、見入ってしまいました。
完成したのはこの10品! スパイスをきかせたおしゃれな味のもの、素材のおいしさが生きたもの、どれも辛くはないので、子どもたちも安心して食べられます。
↑チキンカレー、半熟卵のアチャール、ミートローフ、お弁当用ミニハンバーグ、野菜と豆のトマト煮、タンドリーチキン、れんこんのはさみ焼き、キャロットラペ、ポテトサラダ、そして鍋の中は大根と豚バラの角煮
「大根と豚バラの角煮はこれから味がしみていくので、明日以降がおいしいですよ」「トマト煮はパスタソースにしてもいいかも」などとおしゃべりしながら、どんどん保存容器に詰め、鍋も調理器具もきれいに洗い、ささっと片づけてくれました。
約1年のモニター期間を経て、今年の夏から本格始動したというこの出張シェフサービス。おいしいカレーや本格的なスパイス料理を楽しみたい人はもちろん、小さなお子さんや赤ちゃんがいる家庭の利用も多いそうです。
◆◆◆
さらに腕に磨きをかけ、料理教室も充実させていきたい
出張料理を続けるなかで、これまでご自身があまり使わなかった食材のレシピを増やすための練習や研究も重ねてきたという田口さんですが、その過程も「すごく楽しい!」と笑顔で話してくれました。
「料理が好きだから、もっともっとうまくなりたいと思って。そのための努力も楽しくできています。しかもそれでお客様に喜んでもらえるとは……なんていい仕事なんだろう(笑)。出張料理は子どもが小さい今、大好きな料理を続けるために選んだ道でしたが、〈仕方なく選んだ〉という気持ちはなく、〈いい仕事に出会えた〉と思っています」
そんな田口さんの背中を見て育っている娘さんも料理が大好き。保育園から帰ると「おりょうりする!」と自分で踏み台を運んできて、野菜の皮むきなどをお手伝いしてくれるそうです。ちょっとした作業でも、子どもにやらせるとなると忍耐が必要な場面も付きまとうものですが、田口さんは違います。
「子どもといっしょに料理をするのが夢だったので、すごくうれしい! おままごとでも、包丁を逆にして持っていると『それじゃ手が切れちゃうから絶対ダメ!』とそこだけは厳しく教えています」
自宅では料理教室を2カ月に1回ペースで開催。生徒さんはリピーターが多く、どんどんレベルの高い内容になっているので、今後は初心者の方も参加できる基礎的な講座を考えているとか。そのうち、子ども向けの料理教室もできるのでは!?
「考えたことなかったけれど、やってみたいかも! もうちょっと娘が大きくなって、子どもの様子がわかってきたらやってみたいですね」
★最新情報はInstagramでチェック! ⇒⇒@and_spice
★出張料理(おうちでアンドスパイス) ⇒⇒@andspice_in.your.kitchen