子どもたちの感性を育てる場所。小学生からのわらべうたサークル『学童わらべうた』
皆さん、「わらべうた」ってどんなイメージがありますか?
無伴奏でシンプルで短い歌が多いわらべうた。
小さなころに、遊んだことがある方も多いかもしれませんね。
「赤ちゃんや子ども向け」「古めかしい歌」といったイメージが強いですが、その通りでもあります。
でも実はとても奥が深く、音楽を楽しむ感性を育てることはもちろん、
内面をより豊かにするメソッドがぎゅっと詰まっているのだそう。
今回は小平市立小川公民館で小学生以上を対象にわらべうたを教えていらっしゃる本澤陽一先生と平岡良子先生にくわしくお話を伺いました。
本澤先生(左)
武蔵野大学作曲学科卒業後、音楽科の教諭として小学校・中学校、高等学校養護学校などで35年間勤務。現在、わらべうた&コダーイネットワーク事務局長、合唱団指揮者、日本コダーイ協会国際会員。
平岡良子先生(右)
現在、保育園や小学校にて、幼児や児童に向けわらべうた教育の講師として活動。他、指導者に向けた指導も行っています。
本澤先生と平岡先生が講師をされている、「学童わらべうた」。
ここでは、保護者の方が主に運営をしていて、小学生、中学生、高校生がわらべうたを歌っています。
中学生・高校生は「宙(そら)」という名前で活動し、わらべうたのほか西洋音楽なども、同じく無伴奏で歌います。
活動の歴史は1970年半ばに遡ります。
故羽仁協子先生(日本コダーイ協会元会長)の監修の元、白梅幼稚園で取り入れていた、わらべうたを出発点とする音楽教育を、引き続き行えるように卒園した学童期の子どもたちに向け活動を開始したそうです(※)。
長い年月の中で講師の交代など紆余曲折はありましたが、設立当時からの「学童わらべうた」の生徒さんが今ではママになり子どもと一緒にわらべうたを楽しんでいる姿などもあるとか。
長い歴史と、脈々と受け継がれていく想いを感じました。
※今後はたくさんの子どもたちに「わらべうた」を楽しんでほしいという願いから、他の幼稚園卒の児童も受け入れる予定。
◆遊びが育てる感覚
取材させていただいた日は小学生の日。前半は1年生から2年生まで平岡先生を中心に、後半は3年生から6年生まで本澤先生を中心に、一緒にわらべうたで遊びます。
時には先生に「ママたちも一緒にお願いします!」と言われることも。
この日もママたちの出番がありましたが、ママたちは歌いながらする複雑な動きにどぎまぎ・・・「結構難しいね」と言いながら和気あいあいと楽しく遊んでいました。
ママも一緒に入るわらべうた。子どもたちの表情も自然とやわらぎ、ほっこり暖かい空気になりました。
3~6年生はソルフェージュ(座学)の時間もあります。
とはいえ難しいことではなく、曲の中の、ある一定の音階だけ歌ったり、拍たたきなどでリズム遊びをしたり。
遊びを交えながら音符の読み方や、ハンドサインなど、手や体を動かしながら丁寧に、かつ年齢や個性に合わせながら教え、幅広く音楽に親しみます。
本澤先生は終始ニコニコ。
楽しみながら教えているのが伝わってきました。
そんな雰囲気の中、本澤先生の高い声が響きます。
ドレミの音階で歌う、耳を澄ましながら歌う、手拍子でリズムをとりながら歌う。時には書く。
そういったことを繰り返していくうちに耳の感覚が鍛えられ、研ぎ澄まされます。
◆「わらべうた」ってなんだろう?
わらべうたは、日本の伝承の音楽で “ どこどこの地域で歌い継がれてきた歌 ” などが多く基本的には作曲者がいません。
始まりもわからないので中には平安時代にできたものもあるかもしれません。
伝統文化としても価値があるものかもしれませんが、「それ以上に子どもにとって価値があるもの」だと本澤先生は言います。
子どもたちにとっていいものでなければ時間とともに淘汰されてしまいます。
しかし現在でも歌い継がれ、残っているものは、子どもにとって魅力があるということ。
そういった音楽に触れられることも魅力の一つではないでしょうか。
また、母国の音楽に触れ、母国の音楽を通した音楽教育ということもわらべうたの特徴。
日本的な文化や心に触れられる一番の教材でもあります。
また、日常生活の中での言葉や動きがたくさん出てくるため自然と音楽に親しみがわき、遊びながら言葉や動きを身につけることができます。
◆「歌いながら遊ぶ」ことの奥深さ
わらべうたはとても素朴なメロディーなので子どもが覚えやすく、まだ未発達な子どもの声でも無理なく歌いやすいのだそう。
皆で歌って声を揃えたら気持ちがいいな、という喜び、さらに「歌いながらも耳を澄ます(ほかの人の声をよく聴く)」ことでもっときれいに揃うんだということなどひとつひとつ丁寧に体験しながら音楽を楽しむ感性を育てていきます。
すぐにみんなで歌い、遊ぶことのできるわらべうた。
この「歌いながら遊ぶ」という事がとても重要なのだそうです。
歌いながら拍をとり、周りの動きに合わせることなど、意識はしなくても自然と様々な感覚を使います。
そんな遊びを繰り返すことで、自然と音感・リズム感・コミュニュケーション能力・協調性・社会性などが育っていきます。
もちろん、楽しいことが大前提!子どもたちは思いっきり走り回ったりすることもあるくらいですが、
「嫌なときはお部屋の端で見学してたっていいんです。」とゆったり構えていてくれる、先生の頼もしい姿勢も素敵だなと思いました。
「わらべうた」は単純に〈うたのおけいこ〉ではなく、感性を磨くことのできる場所なのだと教えてもらいました。
古いようなイメージからは想像できない、新しさすら感じるわらべうたの世界。
聞けば聞くほど、意外な奥深さがあり、とても興味深いお話でした。
◆音楽を楽しむ子どもたち
通っているママからもお話を伺いました。
・無伴奏なので、周りのお友達の声に集中することができるし、聴く耳が育っていい。また、周りを感じたり呼吸を合わせたりする感覚が遊びの中で自然に育っている感じがする。
・しゃべり声とは違う、きれいな声で歌えるようになってきた。
・伴奏のない静かな世界の中に自然に歌があって、楽器がなくてもその場ですぐ始めることができるのがとても良いと感じています。
・集団行動が苦手で、歌わないし輪に入らないこともしばしば。でも家では口ずさんでいるので実は聴いているんだなと思っています。
・音楽が特別得意になったというわけではありませんが、日常的にもいろんな音楽を口ずさんだり色々な角度から音楽を楽しんでいるように感じます。
子どもによって感じ方は様々ですが、例え楽器を使えなくても歌が苦手でも、音楽を楽しむ心を育てるわらべうたはとても素敵だと思いました。
見学は随時受付中!子育てに取り入れる気持ちで、ぜひ「わらべうた」の世界を体感して欲しいなと思います。
【体験・見学について】
◆1月~3月まで自由に体験や見学可能(2回~3回OK)
小学生以上の「学童わらべうた」、中学生以上の「宙(そら)」では、随時見学を受付中ですが、
じっくり体験できるように1月から3月までの期間中、
お子さまの様子に応じて2~3回(それ以上は応相談)体験OKなのだそう。
この機会にぜひわらべうたを身近に感じてみてくださいね。
会場:東京都小平市小川町1-1012 小平市立小川公民館
期間:令和6年1月~3月
※直接来場してもOK
【学童わらべうた】
対象:令和6年度から小学生になる児童・小学生以上
時間:15
2月16日(金)小川公民館
※2月、3月以降に関してはお問い合わせください。
【宙(そら)】
対象:中学生以上
時間:19
2月3日(土)小川公民館
2月17日(土)小川公民館
※3月以降に関してはお問い合わせください。
※冬期は暗くなるため、10分程度早く終了します。
お問合せ:warabeuta.sora@gmail.com
詳細情報
名称 | 『学童わらべうた』『宙(そら)』 メール |
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地図 | |
住所 | 〒1870032 東京都小平市小川町1-1012 小平市立小川公民館 |
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