地域の子どもたちに寄り添うおもちゃの修理屋さん『小平おもちゃの病院』
子育てをする上で欠かせないものはたくさんありますが、おもちゃもその一つといえます。
発達を促してくれたり、お友達とのごっこ遊びを盛り上げてくれたり、そして大切な思い出になっていくものもありますよね。
自分の子どもにおもちゃを選んだり一緒に遊んであげたりしているパパママも、かつては自分のおもちゃを手に取って遊んでいたのではないでしょうか?
壊れてしまって遊べなくなってしまった子どものおもちゃも思い出のおもちゃも、持ち主の気持ちを汲み取り、修理してくれる“おもちゃドクター”のいる団体があります。
『小平おもちゃの病院』では、ドクター12名、ナース5名の方々が月2回集い、修理を受け付けています(※第2・第4土曜日、13:00~15:30、開催場所は福祉会館、他)。
今回は、全国組織のボランティア団体「日本おもちゃ病院協会」にも登録している『小平おもちゃの病院』のメンバーの方々にお話をお伺いしました。
◆壊れたおもちゃにもう一度命を吹き込む
おもちゃの音が出なくなった。部分的に割れて、正しい動きをしなくなった。パーツがなくなってしまった。
などなど、仕様がさまざまなおもちゃは、壊れ方もさまざま。
故意でなくても落としてしまうなどして壊れると、さすがにダメかな・・・とあきらめてしまうこともあるかと思います。
おもちゃメーカーに相談しても、保障のあるゲーム機器などごく一部を除いて修理を断られるケースがほとんどで、
基本的におもちゃメーカーは修理業務を行っていないのだそう。
初期不良であれば一般的に現品交換が主流で、使っていて壊れてしまっても修理ができないので、
メーカーの方から「おもちゃの病院へ行ってください」と、言われる場合も少なくないのだとか。
そんなときに頼れるおもちゃの病院は、壊れてしまったおもちゃを直す、その名の通り『病院』なのです。
◆『小平おもちゃの病院』 院長 服部 敏明さん
『小平おもちゃの病院』は平成14年の設立以来、おもちゃの無料修理を通じて 「ものづくりの楽しさ」「ものを大切にする心」を伝えています。
豊富な経験と知識、技術を生かし、社会福祉活動に貢献し、豊かな人生を送ることを目的としています。
昨年20周年を迎え、東京都社会福祉協議会から感謝状が贈られ、小平市社会福祉協議会から特別表彰されました。
「おもちゃと称するものならなんでも診れますよ!」とお話しくださった、『小平おもちゃの病院』服部先生。
まさに地域に根差した、子育て世代の、そして子どもたちの、強い味方だなと思いました。
◆持ち主の想いを尊重してくれるドクターたち
修理をしてもらうには、来院してカルテを作る必要があります。
持ち主の住所や氏名、おもちゃの症状を受付のナースが確認した後、ベテランドクターによる予診があります。
簡単な補修や修理で直るものなら当日その場で持ち帰りが可能ですが、時間がかかる場合は入院となることも。
筆者も昨年、おもちゃのショベルカーの修理をお願いしたことがあり、その時は入院判断でした。
当時5歳の息子は泣きませんでしたが、入院となったとき、持って帰れないことを知ると泣いてしまう子もいるのだそう。
そのようなときは次回以降に改めて持ってきてもらうか、可能な限り大至急で修理することもあるのだとか。
そんな様子を思い浮かべるとなんだかほっこり。
子どもたちの気持ちに寄り添ってくれるドクターたちは素敵だなと思いました。
◆取材させて頂いた日、持ち込まれた歌って踊るサンタさん。
少し動きが鈍いので持ってこられたそう。
この場で治らず、サンタさんは入院。
「クリスマスまでには間に合わせますね」 と服部先生。
このサンタさん、なんと30年前にお孫さんに購入したもので、
今度はひ孫のために治してあげたいのだとか。
そういったストーリーがとても心に残ります。
◆運び込まれてくるたくさんのおもちゃたち
取材に伺ったこの日も、開院している時間には次から次へと壊れたおもちゃが運び込まれ、
ナースが丁寧に患者さん(おもちゃ)の症状を聞き、カルテに書き込んでいました。
この日訪れたご家族は、動かなくなってしまった車や、コントローラーを持ち来院。
ドクターがその場であれこれ試すとお子さんの目はキラキラ!
結果的にその場では直らず入院になりましたが、専門の機器や道具を使う作業を間近で見られるのは子どもにとっても興味深く、なかなか経験できない面白い時間です。
乗用玩具はハンドルが利かなくなってしまったとのこと。ドクターがその場で確認していました。
「砂が入ってしまったのかな」とその場で修理する姿も。
目の前で直してくれるのは子どもにとっても刺激になり、
まさに「物を大切にする」ということを実際に教えてあげられる素敵な機会ではないでしょうか。
まれにおもちゃ以外の物も持ち込まれることもあります。
こちらは言語訓練用の機器なのだそう。
基本的にはおもちゃ以外は専門外なのですが、メーカー廃版で部品がなく、一般的には修理不可のため、
途方に暮れたお客様が相談だけでもと来院されたのだとか。
実際に対応できるかは別として、おもちゃ以外にもさまざまなケースがあるのだそうです。
◆おもちゃ修理を通して、物を大切にする心を育む場所
おもちゃの病院で働くドクターたちは、現役で他のお仕事をされている方もいらっしゃいますが、多くは定年退職されておもちゃドクターになった方だそうです。
皆さん現役時代の知識を持ち寄り、活かし、そして新たに知識も取り入れながら、おもちゃの修理をしています。
電気や機械関係などモノづくりの分野出身の方、教師の方、鉄道会社の方・・・分野は様々ですが、
共通しているのはモノづくりが大好きだということ。
おもちゃ修理は、治療方法が一つではないケースもあるのだといいます。
どのようなアプローチをするか考えることも修理の面白さであり、奥深いところ。
時にはドクター同士で知識を出し合いながら、お互いの技術や知識を高めていけるので、刺激にもなり、とてもやりがいがあるのだそう。
修理を経験すればするほど知識も豊富になり、また、おもちゃの進化にもしっかり適応して、なおかつそれも楽しんでいる様子が、お話ししていて伝わってきました。
『今日やることがある』『今日行くところがある』ということが居場所となり、かけがえのない仲間たちとの交流もできる場としてもとても大切、とあるドクターは言います。
特に一番の大きな喜びは、なんといっても壊れたものが治った時。
達成感も特別で、定年退職後のドクターにとっても生活の中で大切な欠かせない活動になっているのだそうです。
そして直したことで喜んでくれる人がいることが、さらにさらに大きなやりがいになります。
子どもが幼少期に遊んでいた、30年前の動かないぜんまいおもちゃを修理したことがあるドクターのお話を聞くと、
30年間ずっと手元に持っていた持ち主の方の喜びはどれほどだったかなと、私も思いを巡らせずにはいられませんでした。
「直ったおもちゃで遊んでくれているところの写真を見せてもらったとき嬉しかったな」とお話ししてくださるドクターもいらっしゃいました。
おもちゃひとつひとつに何かしらの物語があり、持ち主の方の想いがあります。
そんな思いに静かに寄り添い、壊れたおもちゃにもう一度命を吹き込んでくれる『おもちゃの病院』。
物を大切にするということを改めて考えるきっかけになりました。
◆治癒率95%!見えないところでのきめ細やかなドクターたちのフォロー
お話を伺う中で驚くこともありました。実はパーツを手作りなさることもあるのだとか。
あるドクターは、手回しオルゴールの内部が劣化してしまったため、内部構造部分を手作りしたことがあるそう。
かなりきめ細やかなフォローに驚くと同時に感動しました。
◆こちらは、車のおもちゃの扉部分の故障の修理。 扉のほんの一か所の損傷でしたが、解体しないと修理ができない部分だったため解体。
「解体に時間がかかってしまったなぁ」とつぶやきますが、 「好きでやってるからいいんだよ」と楽しんでいる様子が伝わってきました。
ドクターたちの陰ながらの努力で、修理は成り立ちます。
『小平おもちゃの病院』に持ち込まれたおもちゃの治癒率は95%。
本当にドクターそれぞれの陰ながらの努力があってこそ、おもちゃの病院は成り立っているのだなと思いました。
これはもう直らないので仕方ない、と泣く泣くあきらめる前にぜひ『おもちゃの病院』を受診してみてはいかがでしょうか。
【料金】
部品代を除き、修理は無料。入院判断の場合はおもちゃ一つにつき100円、修理できなかった場合は無料。
部品代は通常100円以下、それ以上かかる場合は依頼者に相談。
【ご依頼いただく場合の注意点】
・取扱説明書がある場合、なるべく添付してください。※なくても可ですが確認する時間の短縮のため。
・ご依頼者の方で、分解をした場合は必ず教えてください。
・修理をお受けできないもの:エアガン、ガスガン、電動ガン、浮輪、浮袋、プール、AC100ボルト直結利用するもの、防犯ベルなど保証が必要なもの、法に抵触するおそれのあるもの(電気用品安全法など)、骨董的工芸的な価値のあるもの(高価なビンテージ物の修理、外観重視のおもちゃ) リサイクルショップでの購入等により修理後転売の目的の為の修理依頼は受けられません。
・ゲーム機等、メーカーで修理・保障しているものは基本的には受け付け不可です。
詳細情報
名称 | 小平おもちゃの病院 ホームページ メール |
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地図 | |
住所 | 〒187-0043 東京都小平市学園東町1-19-13 小平市福祉会館 |
営業(開業)時間 | 開院場所:小平福祉会館 3階第2集会室 開院日:第2、第4土曜日 開院時間:午後1時15分から午後3時30分まで ※開院場所、日にち、時間はイベント等の都合により変更あり。HPを確認してください。 |
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