【閉店】売り切れ必至の週一パン屋さん~学園坂タウンキッチン金曜日
「国産小麦と白神こだま酵母のパン屋 クルミノ」
※2022年7月、「学園坂タウンキッチン」での営業を終了しました。
今後のイベント出店等の最新情報は文末のリンク、Instagramでご確認ください。
学園坂タウンキッチン金曜日は、週一日営業のパン屋さん「クルミノ」の日。
11時半のオープンから12時ごろにかけて焼き立てパンがズラリと並びます。が、それもつかの間!お客様が続々と訪れて飛ぶように売れていき、あっという間に売り切れ……なんて日も少なくありません。
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国産小麦と酵母にこだわった、もちもちリュスティック
売りは「リュスティック」というフランスパンの一種。フランス語で「田舎風」を意味するリュスティックは、小麦粉、砂糖、塩、酵母だけのシンプルな配合で、小麦本来の味を味わえます。
店主・工藤由美さんがこだわって使っているのは、出身地・北海道産の小麦粉との相性がよい、フルーティーな生酵母「白神こだま酵母」。食べ応えはあるのに重すぎず、しっとりとした焼き上がりの「クルミノ」のパンは、ここから生まれます。
↑リュスティックは食事パンにぴったり。プレーン以外にオリーブやベーコンを練り込んだものも。その他に全粒粉生地を使った「クルミとクリチのハニーブレッド」、菓子パン生地の「クリームパン」、スコーンなど、毎週13~14種類が並びます。
↑「白神こだま酵母の働きで、リュスティックの焼き上がりはフルーティーな香りがするんです!」と工藤さん。製造から販売までたった一人で切り盛りしているので、接客に忙しくなる12時までに全力で焼き終えることを目標にしているそう。
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子育ての傍ら学んだパン作りで、お店を出すまで
工藤さんは小学生(1年生と5年生)姉妹のママ。
学生時代からパン屋の早朝バイトを掛け持ちするほどのパン好きだったといいますが、当時は食べる専門、売る専門。パン作りに目覚めたのは、出産後でした。
「まわりに誰も知っている人がいない状況で、上の子の子育てが始まりました。お給料をもらえるわけでもなく、達成感がない日々に虚しさを感じて悶々としていたとき、好きだったパンを作ってみようと思い立ち、子連れOKのパン教室を探したんです」
赤ちゃんの頃はおんぶしながらのパン作り。1歳になって動き回るようになると教室に連れて行くのが難しくなり、自分のペースで通えなくなります。子どもをみてもらえる週末に通い、あとはひたすら家で焼いていたという工藤さん。
「ただただ、達成感を得るために作っていた」といいます。
上の子が幼稚園に入り、「今だ!」と毎週の教室通いを再開。パン講師の資格をとるためにスパートをかけますが、そのときおなかに下の子が! 「今のうちに」と出産の1か月前まで大きなおなかで通い、産後は保育園の一時預かりを利用して通い続け、50種類以上のレシピをマスター。さらに自作の創作レシピで実際にレクチャーし、試食してもらうという認定試験を突破しました。
「下の子の育児が落ち着いたら、パンを教える仕事をしよう」と少しずつ準備を重ねていた工藤さん。目指したのは、みんなが同じパンを作るのではなく、それぞれが作りたいものを作るパン教室。友人に生徒役をやってもらい、自宅で教える練習をすることもありました。
「慣れてくるとみんな3種類ぐらいのパンを一気に作れるようになるんです。4人で焼いたら12種類! そんなにパンが並んでいる状態を見るのも楽しくて! これを売るのも楽しいだろうなと思いはじめたんです」
そんなある日、友人の誘いでランチに訪れたのが学園坂タウンキッチン。ピンときてすぐに問い合わせましたが、そのときは満席。空きが出たと連絡が来たのは半年後。下の子も年中になっていたので、幼稚園に行っている間に営業してみようと利用を決めました。
「じつは始めたとき、『やります!』と宣言するのが怖かったんです」と振り返る工藤さん。積極的にPRもせず、ひっそりオープンしたという「クルミノ」ですが、友人のクチコミを中心に、知り合いや幼稚園のママ友、商店街の利用者やタウンキッチン常連さんへと、じわじわと客層を広げてきました。
オープンから2年が経ち、仕込みや販売にも余裕ができて、お客様とのコミュニケーションも楽しめるようになったといいます。
「最近は顔なじみの常連さんも増えて。毎週来てくれる方が来ないと『お元気かな?』と思ったり、パンを焼きながら『これをいつも買ってくれるあの人は今日来てくれるかな?』とお客様の顔が浮かんだりします」
↑リュスティック生地の桜つぶあん。「桜の葉の塩漬けが手に入ったので季節限定で作ったらすごくおいしくできて! これ目当てに来てくれる方もいるので、桜の葉がある限り作ります」
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月一のお楽しみ「クルミノ×miel*」コラボサンドは予約必須!
毎月一回は、タウンキッチン水曜日「やさしいオヤツ+ごはんmiel*」とのコラボデーを開催。
モチモチのリュスティック生地のパンはデリとの相性がよく、バルサミコチキンやドライカレーなど、シーズンごとのメニューをはさんだコラボサンドが大人気です。
↑撮影時(7月)のコラボサンドは、鹿児島から取り寄せたレモングラスの爽やかさがアクセントのバインミー(600円/スープかドリンクとセットの場合は50円引き)。
↑「miel*」の庄司淑子さんと。この日は全力で40本仕込みましたが、9割は予約で埋まり、わずかな当日分を狙う人と受け取り客でタウンキッチンの前には長蛇の列が!!「やりかたを工夫して、今後はもっと製造数を増やしていきたい」と熱く語るお二人。
学園坂タウンキッチン歴がいちばん長く、やさしい味のデリとオヤツで大人気の「miel*」店主・庄司淑子さんからは、お店の雰囲気づくりやディスプレイ方法など、学ぶことが多いと話す工藤さん。
「庄司さんは人脈もすごい! コラボデーをきっかけに、お互いの単独営業日に来てくれる方も増えたのでありがたいです。コラボデーの翌日は首や肩がガチガチで動けないほど体が壊れ、土日がつぶれます(笑)」
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週一のパン屋さんから膨らむ今後の夢
週一とはいえ、子育てとの両立を模索しながらの営業は困難の連続です。下の子が幼稚園の頃は、営業前日もお迎え前には仕込みを切り上げなければならず、当日の早朝店に入って仕込みの続きをし、一旦帰宅して子どもたちを学校・幼稚園に送り出し、店に戻って焼く……という綱渡りの日もあったとか。
「体は疲れ切って帰ったらなにもできません。家の中は大変なことに」と笑う工藤さんですが、経験を重ね、子どもたちも成長して二人とも小学生になり、今後を見据える余裕がでてきました。
「一人で作れる分だけ作って売る……というペースなので、いまは午前に1回しか焼いていません。午後焼きもできる余裕ができて、安定して作れるようになれば、もうちょっと営業時間を延ばせるのかな。
先日、祝日に営業してみたところ、平日にはご来店できない方に喜んでいただけたので、ときどき土日や祝日にも営業してみたいと思っています」
いつかはパン教室もやってみたい——という気持ちも持ち続けているのだとか。
「子どもたちがイチから作ったパンを並べて、POPも作って、本物のレジを使ってお母さんに販売したり、自由研究になるようなワークショップもできたらいいな」
一歩一歩着実に、歩みを進めてきた「クルミノ」。工藤さんの夢は、発酵中のパン生地みたいに大きく膨らんでいます。
★早めの来店か、Instagram(@yumi.bread_kurumino)で注文がおすすめです!