すべての子どもたちが、自分らしく生きる事ができる社会へ 「NPO法人 こども未来ラボ」
「こども未来ラボ」は、発達障がいを持つ子どもたちとその家族の支援活動をしているNPO法人です。
活動場所は小平中央公園と五日市街道を結ぶ、二つ塚西通り沿いのライトグリーン色の一軒屋で「まちかど未来塾」の看板が目印です。看板のイラストでも素敵な笑顔で登場なさっている理事長で特別支援教育士の芋生多恵子さんにお話を伺いました。
*「発達障がい」ってなんだろう?
「発達障がい」という言葉、「グレーゾーン」「大人の発達障がい」など、メディアや生活の中でも見聞きする機会が増えてきているのではないでしょうか。アップルの創業者スティーブ・ジョブスさん、Windowsの開発者ビル・ゲイツさん、最近ですと米津玄師さんやFukaseさん(SEKAI NO OWARI)も、ご自身の学生時代の体験など公表なさっていますね。
発達障がいは脳機能の発達に凹凸がある事で、特定のことには非常に優れた能力を発揮する一方で、ある分野はすごく苦手といったような特性があるそうです。発達の凹凸=得意・不得意は誰にでもあるものですが、発達障がいがあるとされる人は、凹凸の差が非常に大きく、生活に支障をきたしているという状態なのだそうです。その特性により、本人や家族が困っていたり、生きづらさを感じるのならば、専門機関への相談や、医療的な診断とサポートを受け、環境を調整する必要があります。
特性は主なものとして、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD:自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障がいなどが統合されてできた診断名)・学習障がい(LD)などがあり、重複することもあります。
特性を本人や家族、周りの人がよく理解し、その人にあったやり方や工夫をすることで本来の力を発揮しやすくなるそうです。
*「こども未来ラボ」の活動
「こども未来ラボ」では、主な活動として小・中学生への学習支援、そして保護者や支援者の支援としてペアレントプログラム及びペアレントメンター事業を小平市委託事業を受けて障がい者支援課と協働で行っています。
この活動は、自分の子どもに障がいがあるかに関わらず、子育てをしてきたなかで親として反省していることを、お母さんたちに話すことが、育てにくさのある子を抱える保護者の支援につながるのではないかという考えで始めたそうです。
スタートは2002年。芋生さんがイギリス在住中に学んだフォニックス法の英会話教室を国分寺に開いたことがきっかけでした。2013年10月小平市に拠点を移し「こども未来ラボ」が誕生したそうです。
◆学習支援活動
小学生の寺子屋(国語・算数)と、フロッグ(フォニックス)英会話教室、中学生個別指導(英語・数学)を行っています。
発達障がいを持つ子どもたちは、学習障がい(知的能力に問題は無いが、文字の読み書きや計算など、特定の学習がいちじるしく苦手である)、感覚過敏、集中力の持続が難しいなど、色々な特性から学習に困難を抱えてしまう事が多いそうです。
ですがそれらの多くは、子どもの特性を理解し、一緒に対処法を考え工夫することで「自分はこれが苦手だけど、こうすればできる」と自尊感情を低下させずに学習に取り組めるようになるといいます。
「こども未来ラボ」には、子どもたちの学習をサポートするための工夫やグッズがたくさんありました。
バランスボールは、身体のどこかを絶えず動かしていると落ち着くという子が、ゆらゆら座りながら学習します。
チクチクの人工芝、椅子の背もたれのイボイボ突起、アロマオイルなどは、感覚を刺激することで集中力を高めます。
ボクシングのパンチングボールは、気持ちをぶつけたり、落ち着かせたりしてくれるのだそうです。
物だけでなく、子どもたちとの関わり方にも工夫がありました。放課後、子どもたちがラボにやってきたらまず最初に「今日の気持ち1~10段階」を聞きます。「今日は3、学校で嫌なことがあって疲れた」そんな時は少し休んだり、ゲームなど遊びの要素があるものから始めます。ここに来るまでにも、色々なことがあるから急に学習モードになれない子もいるので、気持ちに寄り添い、集中して活動ができるのを待つのだそうです。
◆保護者や支援者への支援
◎ペアレントプログラム
子どもの発達の不安や、子育てに困っている保護者や支援者のための子育て応援プログラム講座です。
子どもの特性を知り、行動のしくみを学びます。子どもの行動を肯定的に捉えらえ、かかわり方を工夫することで、良い関係性を築くことができ、子どもの発達にもとても良い影響があるそうです。
◎ペアレントメンター事業
メンターとは、「信頼できる相談相手」という意味。発達障がいのある子どもの親がその育児経験を活かしメンターとして傾聴、情報提供などをしてくれます。東京都の養成研修を受講したボランティアなので、無料で利用可能。専門家とは違い、同じ親としての葛藤や不安に共感しながら寄り添い、さまざまな経験や地域の情報なども伝えてくれます。
保護者同士の交流の場「親カフェふらっとwithメンター」も、月1回開催。適切なサポートのために必要な行政や療育など地域の支援機関の紹介、学校生活や進路の経験談が多いとか。地域の歯科医院の情報なども、「特性を理解してくれる先生に出会えるのは難しかった」ととても喜ばれるそうです。開催日はホームページをご覧下さい。
*子どもたちが自分らしくのびのび育っていける地域へ
最後に芋生さんからメッセージを頂きました。
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こども未来ラボでは、ひとりでも多くの方に、「発達障がい」のことを知ってもらいたいと考えています。外見などではわかりにくいので、わがままや親の育て方が悪いなどと誤解されてしまうことも多いです。
「困った子は、困っている子」~本人が一番悩み困っています。保護者もどう接してよいかわからずその子育ての大変さに苦しんだり、悩みを抱え孤立してしまうこともあります。発達障がいについて理解していただき、地域の中でのびのび子どもたちが育っていけるようサポートをお願い致します。
私たちも発達障がいを知っていただくための活動もしています。ホームページやFacebookをご覧下さい。困りごとや不安なことがあったら悩まずに相談してみて下さい。学校や地域での関わりと連携してサポートさせて頂きます。
「こども未来ラボは」を駄菓子屋さんみたいな地域のみんなが集まり、気軽に相談したり、ぐちを言えたり、ここに来るとちょっと元気になれるような場所にしていきたいです。ぜひ遊びに来てください。
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この取材を通して、発達障がいや、困りごとのある子にとって、その子にあった環境づくりや関わり方がとても大切だということ、また保護者だけで全て行う事の難しさを知りました。芋生さんの「心配しなくて大丈夫だよ、一緒に考えていこう」というお話をうかがい、私も子育てのことで色々ご相談してしまいましたが、とても安心できました。我が子や地域の子どもたちへの関わり方にいかしていけたらと思います。